
歩くと膝が痛い! 変形性膝関節症の症状・原因・治療方法
こんな医療記事、見たことない!
この記事は、日本一分かりやすい変形性膝関節症のコンテンツを目指して作成しています。一般の方には必要ない専門的な情報を省き、図やイラストを多用することで、サッと読むだけ(赤太字だけを読めば、1~2分で概略が分かる。)でも理解できるようにしました。医師監修のもと、信頼性の高い情報のみを取り上げています。

歩き始めに膝が痛む。階段を降りるときに膝が痛い。でも、動いていないときには痛みが治まるからと、ついつい放置している膝の痛みはありませんか? 痛みが繰り返し起きるようなら、それは変形性膝関節症の始まりかもしれません。
たいしたことはないと油断していると、歩くたびに痛みが出たり膝が腫れたりすることもあります。症状が悪化すると手術が必要になることもあるため、早めに対策をとることが大切です。
この記事では、変形性膝関節症の原因や症状・治療方法について、イラストや図を使って分かりやすく解説します。
変形性膝関節症とは
膝の使い過ぎやけがなどによって、骨の変形が起こったりする病気のことです。
- 中高年に生じる膝痛の原因として最も多い。
- 男性よりも女性のほうが発症しやすい。
- 0脚の人に多く見られる。
変形性膝関節症になりやすい人

中高年の女性
男性より女性のほうがなりやすく、高齢になるほど多く見られます。

肥満の人
体重を支える膝関節に大きな負担がかかるため、軟骨がすり減りやすくなります。

O脚の人
膝の内側に過度な負担がかかり、内側の軟骨がすり減りやすくなります。
変形性膝関節症の症状
症状一覧
変形性膝関節症によって現れる症状を一覧できるように図にしました。

症状の現れ方
変形性膝関節の症状の現れ方を順を追って説明します。

症状の推移
動作開始時に膝の内側に痛みを感じる
歩き始めや、立ち上がる・しゃがむ・階段を下りるなど、動作の開始時に、膝の内側に痛みを感じます。膝にこわばりを感じることもあります。
膝の曲げ伸ばし時に痛みが現れる
歩行中、階段の昇降など、膝の曲げ伸ばしに伴って痛みが現れます。
膝に炎症が起こる
膝に炎症が起こり、腫れたり熱を持ったりします。
関節内に水がたまる
炎症が起こることによって、関節内に水(関節液)がたまります。
正座ができなくなる
膝を曲げると強い痛みを感じるため、正座が困難になります。
歩行に支障が出る
痛みを伴うため、歩行にも支障が出ます。

関節遊離体(関節ねずみ)
関節内の骨や軟骨がはがれ、遊離体となって関節の中を動き回ることがあります。遊離体が関節にひっかかることで激痛を生じます。

合併症
半月板損傷
軟骨がすり減ると同時に、半月板が損傷することもあります。

ベーカー嚢腫
膝の後ろにベーカー嚢腫(のうしゅ)ができることもあります。
関連疾患
膝半月板損傷・ベーカー嚢腫・鵞足炎
変形性膝関節症の原因
変形性膝関節症の原因と発症までの流れを詳しく見てみましょう。

原因と発症までの流れ
関節軟骨が老化する
関節軟骨が年齢とともに弾力性を失います。
軟骨がすり減る
長年繰り返し使ったり、過剰な負担をかけることで軟骨がすり減ります。
膝関節に炎症が起こる
すり減った軟骨の小片によって、関節を包む膜の内側に炎症が起こります。
膝に水がたまる
炎症の修復のために関節液が分泌されます。これによって、膝に水がたまります。
骨が変形する
クッションの役目をする軟骨がすり減ることで骨と骨が当たるようになり、膝関節が変形します。骨が硬くなったり、骨棘(こっきょく)という余分な骨ができたりすることもあります。

けがの後遺症
半月板損傷やじん帯損傷、骨折など、外傷の後に二次的に発症することがあります。

病気の後遺症
化膿性関節炎や通風の後遺症として発症することもあります。
変形性膝関節症の検査・診断方法
変形性膝関節症を診断するには整形外科で検査をしてもらう必要があります。検査や診断方法について解説します。

触診と観察
膝の内側のくぼみを押し、痛みが強いかどうかを見て軟骨に損傷があるかを判断します。関節の動く範囲、腫れやO脚の有無なども調べていきます。

X線検査
関節軟骨のすり減り具合や骨の変形を確認します。立位で撮影すると変形の具合がよく分かります。

関節液の検査
膝に水(関節液)がたまっている場合は、注射器で抜き取って検査する場合があります。

血液検査
関節リウマチなど、ほかの病気が疑われる場合に用いられます。

CTまたはMRI検査
X線では調べられない骨内の状態を観察します。関節内遊離体や半月板損傷、ベーカー嚢腫などが疑われる場合に実施します。
変形性膝関節症の治療方法
変形性膝関節症が初期段階のうちは保存療法を選択します。保存療法で改善できない場合には、手術療法を用います。
保存療法
痛み止めや外用薬などの薬物療法を用いると同時に、運動や温熱などの理学療法の併用します。

関節周辺の筋肉を鍛える
初期から中期の場合は運動療法を実践します。大腿四頭筋(だいたいしとうきん)など、関節周辺の筋肉を鍛えます。間違った運動は逆効果になるため、専門家の指導のもとで行うことが大切です。

薬で炎症と痛みを和らげる
痛み止めの内服薬、消炎成分の入っている湿布や塗り薬を用います。ステロイドの注射を使用することもあります。

膝の水を抜く
膝にたまった水が痛みの原因になっている場合、注射器で水を抜きます。

膝を温める
温熱治療器で膝関節を温めます。関節の組織を柔軟にし痛みや炎症を軽減します。

装具・補助具を使う
膝の筋力を補うために、外出時にはサポーターを使用します。サポーターは冬場の保温にも役立ちます。O脚の人は、膝の内側に負担がかかりすぎないように、体重が外側にかかる靴の中敷きを用いることもあります。
手術療法
手術方法には、関節内ですり切れた半月板や軟骨のささくれを取り除く関節鏡視下手術(かんせつきょうしかしゅじゅつ)、脛骨(けいこつ・すねの骨)の一部を切って角度を変えることで関節の内側に偏った荷重を均等にする高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ)、傷んだ膝関節部分を切除して人口の膝関節と入れ替える人工関節置換術などがあります。病状に合わせて最適な方法を選択します。

関節鏡視下手術の流れ
皮膚を切開する
皮膚を2か所切開し、片方に関節鏡(内視鏡)、もう片方に切除用の器具を入れます。
痛みのもととなる部分を切除する
モニターで確認しながら、炎症を起こしている滑膜(かつまく)や、変性を起こした軟骨や半月板、骨棘(こっきょく)など、傷みのもとになっている部分を切除します。手術期間は2~3日から1週間です。

高位脛骨骨切り術の流れ
骨に切り込みを入れる
脛骨の内側から骨に切り込みを入れます。
人口骨のプレートを固定する
切り込みに人口骨のプレートを入れて脛骨の傾きを調節します。手術時間は1時間半程度です。
リハビリを行う
人工的に骨折を起こしている状態のため、骨が完全にくっつくまで数か月を要します。入院中からリハビリをはじめ、退院後も継続してリハビリを行います。

人工関節置換術の流れ
膝を切開
膝をほぼ正面から切開し、膝蓋骨(しつがいこつ・皿の骨)を取り除いて患部を露出させます。
傷んだ関節部分を取り除く
大腿骨(だいたいこつ・太ももの骨)の下端と脛骨の上端から、損傷している部分を取り除きます。
骨を滑らかに整える
人工関節と骨が密着するように、切断面を滑らかに整えます。
トライアルでバランスを確認
仮の人工関節で関節の曲げ伸ばしや靭帯のバランスを確認します。
インプラントの設置
大腿骨側、脛骨側、膝蓋骨側にそれぞれ人工関節を設置します。
膝関節の動きを確認
人工関節設置後の膝関節の動きを確認します。
切開した組織の縫合
手術で切開した筋肉や皮膚などの組織を縫い合わせて傷口を閉じます。手術は約2時間です。通常の入院期間は1~2か月ですが、最新式の手術では約2週間で退院できることもあります。
まとめ(病気に気付いたら)

放っておくと
変形性膝関節症は重症化すると膝が曲がらなくなり、歩行も困難になります。最悪の場合、寝たきりになることもあるため注意が必要です。
症状に気付いたら
膝の痛みに気付いたら、我慢しないで早めに整形外科を受診しましょう。